製造業・BtoBメーカーのサイトがAI検索で引用されにくい最大の理由は、情報がPDFカタログと型番の羅列に閉じていて、「その部品が何にどう使えるのか」がHTMLの文章として書かれていないことです。AIが読める場所に、読める形で置かれていない、というだけの話であることが少なくありません。
この記事では、まず自社で無料でできる確認と修正を手順として整理し、そのうえで当社が毎日測っている実測データから「何が動いて、何が動かないのか」を共有します。GEO(Generative Engine Optimization=生成AI検索での見え方を整える取り組み)という言葉は最近よく聞きますが、製造業の場合、やることの多くは地味なページ整備です。
なお当社は栃木県宇都宮市のWeb制作・SEO会社として、自社サイトを観測対象にしてAI検索での言及を毎日測り続けています。数字はすべて自社の実測値で、クライアント企業の数値は含みません。
記事執筆者:認定SEOコンサルタント 三田健司
なぜ製造業・BtoBメーカーのサイトはAI検索で引用されにくいのか

ChatGPTやGeminiに「〇〇の加工ができる会社を教えて」と聞いたとき、名前が挙がる会社と挙がらない会社があります。技術力の差ではなく、サイトの作り方の差で決まっている場面が多くあります。
製造業のサイトには共通した3つのパターンがあり、それがそのまま引用されにくさにつながっています。順に見ていきます。
情報の中身がPDFカタログの中に閉じている
製品情報がすべて総合カタログのPDFにまとまっていて、サイト側には「カタログダウンロード」のボタンしかない、という構成はよく見かけます。紙のカタログをそのままPDFにした運用としては効率的ですが、AI検索から見ると情報がほぼ存在しないのと同じ扱いになりがちです。
GoogleはPDFを含むさまざまな形式のファイルを発見・クロール・インデックスすることがあると説明していますが、同時に「だからといってそのファイルが特別に扱われるわけではない」とも書いています。PDFはHTMLページの代わりにはならないと考えるのが安全です。
加えて、フォーム入力が必要な資料ダウンロードの奥にPDFがある場合は、そもそもクロールできません。営業上は当然の設計ですが、AI検索での露出とは真正面からぶつかります。
型番と寸法は並んでいるが「何に使えるか」が書かれていない
製品一覧が型番・材質・寸法の表だけで構成されているケースです。既存の取引先にとっては十分な情報ですが、初めて探している人の質問文とはまったく接点がありません。
AIに投げられる質問は「食品工場で使えるステンレスの搬送部品を探している」のような用途の言葉です。サイト側に用途の言葉がなければ、どれだけ型番が並んでいても照合されません。
ここで必要なのは大量のキーワードではなく、その製品が「どんな条件で、何のために使われているか」を1〜2段落で説明した文章です。現場の担当者が普段口で説明している内容をそのまま書けば足ります。
一次情報が社内に眠ったままになっている
加工事例、試作の失敗談、材料選定で迷ったときの判断基準。こうした情報は製造業の社内に必ず蓄積されていますが、サイトに出ていないことが多いです。
Googleは生成AI検索向けの公式ガイドで、独自の視点を持つ「非コモディティなコンテンツ」を作ることが、他のどの施策よりも長期的な露出に影響すると述べています。一般論をまとめ直した記事ではなく、自社しか書けない具体的な話が求められている、という整理です。
製造業はこの点で本来かなり有利な立場にあります。書く材料はあるのに、外に出す工程が抜けている状態です。
AI検索は何を見て答えているのか|Google公式が説明する仕組み
対策を考える前に、AI側がどう情報を取っているかを押さえておくと、やるべきことが絞れます。Googleは2026年5月に生成AI検索向けの公式ガイドを公開しており、内部の考え方をかなり明確に書いています。
RAGとクエリファンアウト
ひとつはRAG(Retrieval-Augmented Generation=検索拡張生成、グラウンディングとも呼ばれます)です。AIが答えを作るとき、既存の検索インデックスから関連ページを引っ張ってきて、その内容をもとに回答を組み立てる仕組みです。
もうひとつはクエリファンアウトで、ユーザーの質問1つから、AIが関連する複数の検索を同時に投げる挙動です。Googleは「雑草だらけの芝生を直す方法」という質問から「芝生用の除草剤」「薬剤を使わない除草」などの派生検索が生成される例を挙げています。
製造業に置き換えると、「食品工場向けの搬送部品」という質問から「ステンレス 加工 食品衛生」「搬送コンベア 部品 メーカー」といった検索が同時に走る、という理解になります。どの派生検索でも引っかからないサイトは、回答の材料に入りません。
Googleは「GEOもAEOも結局SEOだ」と書いている
同じガイドの中で、GoogleはAEO(Answer Engine Optimization)とGEOという言葉に触れ、Google検索の立場からは生成AI検索向けの最適化も検索体験の最適化であり、つまりSEOであると明記しています。
これは「新しいことを覚え直す必要はない」という意味でもあり、「SEOで手を抜いていた部分はそのまま弱点になる」という意味でもあります。インデックスされていないページ、スニペットが出ないページは、生成AI機能の表示対象にもなりません。
ただしChatGPTのように独自にクロールしているAIもあるため、Googleの説明だけで全体を語ることはできません。この記事の後半では、Google以外のAIについても触れます。
実測データ:「おすすめ」「選び方」では自社も70日間ずっと0%
ここで当社の実測データを共有します。自社サイトについて10個の質問を用意し、ChatGPT(OpenAI)・Gemini・Google AI Overviewsの3つに毎日投げ続けているものです。
70日・2,077観測の全体像
2026年7月4日から9月18日までの70日間、合計2,077回の観測で、自社名がAIの回答に登場したのは570回でした。全体の自社言及率は27.4%です。
AIごとの差はありました。同じ70日・2,077観測の内訳で、Geminiが33.3%(230/690)、ChatGPTが31.1%(217/697)、Google AI Overviewsが17.8%(123/690)です。
観測にかかった費用は70日間で約20ドル、1日あたり約0.29ドルでした。個人でも続けられる金額ですが、手作業でこれを毎日やるのは現実的ではありません。
質問の種類で結果がはっきり分かれる
同じ70日・2,077観測を質問ごとに分けると、傾向がはっきり出ます。社名を直接指定した質問は94.2%(195/207)、地域名+MEOの質問は83.1%(172/207)、地域名+ホームページ制作は76.9%(160/208)で登場しました。
一方、県域+SEOという広い質問は20.7%(43/208)にとどまりました。そして「SEOツールのおすすめ」「中小企業向けの選び方」といった一般的な質問6種類は、70日間すべて0.0%(0/208)でした。
製造業に置き換えると、「〇〇株式会社はどんな会社?」には答えてもらえるのに、「精密切削加工が得意なメーカーを教えて」には1度も出てこない、という状態に当たります。BtoBメーカーが本当に欲しいのは後者ですが、そこがいちばん動きにくい領域だ、というのが70日測ってみた実感です。
この「指名では出るのに、おすすめ・比較では出ない」現象については、別記事で仕組みを詳しく整理しています。

製造業が最初に確認する3つの技術的な足元

コンテンツを増やす前に、足元の確認から入ります。ここでつまずいていると、何を書いても届きません。いずれも社内で無料で確認できます。
AIのクローラーを止めていないか
自社サイトの https://(ドメイン)/robots.txt をブラウザで開いてみてください。数年前に「AIに学習されたくない」という判断でAI系のクローラーを一律で拒否している場合、AI検索の回答に出る道もふさがっています。
ここで注意が要るのは、OpenAIが用途の異なるクローラーを分けて運用している点です。公式ドキュメントでは、検索向けのOAI-SearchBotと、基盤モデルの学習向けのGPTBotが別物で、設定はそれぞれ独立していると明記されています。
OpenAIは、OAI-SearchBotを拒否したサイトはChatGPTの検索回答に表示されなくなると書いています。学習は断りたいが検索には出たい場合は、GPTBotだけをDisallowにしてOAI-SearchBotはAllowにする、という設定が取れます。判断は自社の方針次第ですが、意図せず両方止めていないかは確認する価値があります。
HTMLページが存在しているか
製品情報がPDFのみになっていないか、サイト内検索やサイトマップで確認します。「製品一覧」が画像1枚だけで構成されているパターンも意外とあります。
スペック表を画像として貼っている場合も、文字として読めません。表はHTMLのtableで組み直すのが基本です。
そもそもインデックスされているか
Googleは、生成AI機能に表示される前提として、ページがインデックスされていてスニペット付きで表示できる状態であることを挙げています。Search Consoleに自社サイトを登録し、主要な製品ページがインデックス済みかを確認してください。
なお公式ガイドには、要件を満たしていてもクロール・インデックス・表示が保証されるわけではない、という注記もあります。ここは「必要条件をそろえる」作業だと考えるのが正確です。
カタログ型サイトを「引用できる形」に直す4ステップ
ここからが本題です。新しい資産を作るのではなく、すでに社内にある情報をAIが読める形に移す作業になります。順番を守ると迷いません。
ステップ1:製品カテゴリーごとに1ページを立てる
まず全型番にページを作ろうとしないことです。型番が数百ある会社が1型番1ページを目指すと、中身の薄いページが大量に生まれます。
Googleは、検索のされ方のバリエーションごとにページを量産する行為を大量生成コンテンツのスパムポリシーに触れると説明し、ページ数の多さがサイトの品質や関連性を上げるわけではないとも書いています。まずは「搬送部品」「精密切削」のようなカテゴリー単位で、読み物として成立するページを数本作るところから始めます。
ステップ2:PDFの中身をHTMLに起こす
総合カタログの該当ページを開き、そこに書かれている仕様・材質・公差・表面処理の選択肢を、そのままHTMLの表と文章に移します。PDFは残したまま、HTML版を並べて置く形で構いません。
このとき、カタログには載っていない「なぜその仕様なのか」を1段落足すと、ページの独自性が一気に上がります。設計の意図は社内にしかない情報です。
ステップ3:用途と条件を文章で書く
「どの業界で」「どんな環境で」「何と組み合わせて」使われているかを書きます。守秘義務があるなら業種と条件だけを書き、社名は出さない形で十分です。
ここで大事なのは、対応できない条件も書くことです。使用温度の上限、対応できない材質、最小ロットの制約を明記したページは、読む側にとっての判断材料になります。
ステップ4:問い合わせまでの導線を1画面に収める
AIの回答からリンクをたどって来た人は、前提知識をほとんど持っていません。製品ページの中に、見積依頼の条件(必要な図面形式、概算の納期、最小ロット)を短く書いておきます。
資料ダウンロードのフォームを唯一の入口にしていると、ここで離脱します。フォームは残しつつ、電話番号と「まず概算だけ知りたい方へ」の一文を添えるだけでも変わります。
製品ページに入れる7項目|そのまま使えるテンプレート

何を書けばいいか決まらないと手が止まるので、項目を固定します。以下の7項目を埋めれば、製品カテゴリーページとして最低限の形になります。
埋めるべき7項目
- この製品・加工が何であるかの1〜2文の説明
- 主な用途と、使われている業界
- 対応できる仕様の範囲(材質・寸法・公差・表面処理)
- 対応できない条件と、その理由
- 実際の加工事例(数量・材質・要求精度・リードタイム)
- よく聞かれる質問と、その回答
- 見積依頼に必要な情報と、概算納期
4番と5番が、他社サイトといちばん差がつくところです。ここは社内の人間にしか書けません。
書けない項目は空欄にせず理由を書く
公差や単価を出せない事情がある会社は多いです。空欄にするのではなく、「個別見積のため非公開」「材質により変動するため要相談」と書いておきます。
情報がないことと、非公開であることは読む側にとって意味が違います。項目の枠は残したまま、状態を書くのが実務的です。
技術資料と加工事例を一次情報に変える
7項目を埋め終わったら、次は事例です。製造業のAI検索対策で伸びしろが大きいのはここだと考えています。
事例は数字と条件をセットにする
「精度向上に貢献しました」だけでは、読んでも判断できません。要求公差、素材、数量、工程数、納期を並べて書くと、同じ条件を探している人に届きます。
顧客名を出せない場合は「自動車部品メーカー向け」で構いません。条件が具体的であれば、社名の有無は大きな問題になりません。
不採用になった検討こそ独自性が高い
Googleの公式ガイドは、一次的な体験に基づくレビューのように独自の視点を持つ内容と、誰でも書ける一般論との違いを挙げ、後者は読者に新しい示唆をほとんど与えないと説明しています。
製造業でこれに当たるのは、「この材質で試したが要求精度に届かず、別の工法に切り替えた」という話です。売り込みにはなりませんが、検討中の人にとっては最も価値のある情報になります。
構造化データとllms.txtはどこまでやるか
構造化データについて、Googleは生成AI検索に必須ではなく、特別に追加すべきスキーマもないとしています。ただしリッチリザルトの対象になるため、SEO全体の施策として続ける価値はある、という書き方です。
llms.txtについては、Googleは検索側で利用していないと明言しています。作っても順位や露出に有利にも不利にもならない、他のサービス向けに用意するのは自由、という位置づけです。
つまり優先順位は、ページの中身を直すことが先で、マークアップやファイル追加は後です。構造化データの考え方は別記事で整理しています。

自社が今どう扱われているかを測る|無料でできる範囲

直す前に現状を記録しておかないと、後で効果が判断できません。ここは無料で始められます。
質問を10個決めて、3つのAIに聞く
社名を含む質問を2つ、加工内容や用途で探す質問を8つ用意します。それをChatGPT・Gemini・Google検索のAI Overviewsに同じ文章で投げ、回答に自社が出るかを記録します。
当社の70日・2,077観測では週ごとの言及率が24〜30%の範囲で揺れていました。1回聞いて出なかっただけでは、何も判断できないという前提で見てください。
記録するのは3つだけ
スプレッドシートに、日付・質問・自社が出たかどうかの3列だけを残します。競合名も一緒に記録すると、自社が出ない質問で誰が出ているかが見えてきます。
Google検索での生成AI機能の表示については、Search Consoleの生成AIパフォーマンスレポートで表示回数を確認できます。こちらはGoogle側の実データなので、手作業の記録と併せて見ると精度が上がります。
手作業の限界と、当社の立ち位置
この作業を毎日続けるのは現実的ではありません。当社のAccessGEOは、この観測を代行して月次レポートにまとめるサービスです。
正直に書いておくと、現在対応しているのはChatGPT・Gemini・Google AI Overviewsの3つで、Perplexityやその他のAIは含まれていません。測る対象を広げたい場合は、他のツールと併用する形が現実的です。
よくある質問
対策をすれば必ずAIに表示されるようになりますか
なりません。Googleも、要件や推奨事項を満たしていてもクロール・インデックス・表示は保証されないと明記しています。
当社の実測でも、70日間まったく登場しなかった質問が6種類あります。確率を上げる取り組みだと捉えるのが実態に合っています。
総合カタログのPDFは削除したほうがいいですか
削除する必要はありません。既存顧客が使っている資料を消すと現場が困ります。
PDFは残したまま、同じ内容のHTMLページを別に用意するのが基本方針です。重複を心配する声もありますが、まずHTMLで読める情報があることを優先してください。
どれくらいの期間で変化が見えますか
当社の観測では、月単位で見ると7月27.1%、8月27.2%、9月28.4%(70日・2,077観測)という動きでした。数週間で大きく変わるものではありません。
一方で、県域+SEOという特定の質問だけは7月から9月にかけて明確に上昇しています。全体の平均より、質問ごとの動きを見るほうが変化に気づきやすいです。
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まとめ
製造業・BtoBメーカーがAI検索で引用されにくい理由は、情報がPDFと型番表に閉じていて、用途と条件が文章になっていないことにほぼ集約されます。技術力の問題ではありません。
やることの順番は、robots.txtとインデックスの確認、PDFの中身をHTMLに起こす、7項目を埋める、加工事例を条件つきで書く、の4つです。構造化データやllms.txtはその後で構いません。
そして、直す前に現状を記録しておくこと。当社の70日・2,077観測(2026年7月4日〜9月18日)では全体で27.4%、質問の種類によって0%から94.2%まで開きがありました。平均値ではなく、自社が本当に出たい質問ごとに測るのが実務的です。
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