不動産会社がAI検索で集客するために最初にやることは、物件情報を増やすことではありません。自社が「どのエリアの、どんな取引を扱う会社なのか」を、自社サイト上に文章で書き切ることです。
理由ははっきりしています。ポータルサイトに掲載された物件情報は、AIから見ればポータルのコンテンツであって、御社のコンテンツではないからです。反響は取れても、会社の輪郭はAI側に残りません。
この記事では、当社が自社サイトを対象に毎日行っているAI検索の定点観測(2026年7月4日〜9月22日/74日・2,197回)の数字を使いながら、不動産会社がポータル依存を抜けるために何から手を付けるかを、自分でできる手順から順に整理します。
記事執筆者:認定SEOコンサルタント 三田健司
不動産会社のAI検索集客は、いま何が起きているのか

AI検索とは、ChatGPTやGemini、Googleの検索結果上部に出るAI Overviewsのように、AIが複数のサイトを読んで文章で答えを返す検索体験のことです。検索結果の一覧ではなく、要約された1つの答えが返ってきます。
ここで起きている変化は単純です。利用者が10件のリンクを比べるのではなく、AIが挙げた数社の中から選ぶようになりつつある、ということです。
「〇〇市 不動産会社 おすすめ」と聞くと何が返るか
この種の質問を投げると、返ってくるのは大きく3種類です。大手ポータルサイトの一覧ページ、地域の情報メディアの比較記事、そして個別の不動産会社名。
このうち個別の会社名が挙がるのは、その会社について書かれた文章がウェブ上に十分あるときに限られます。ポータルに物件を出しているだけでは、AIが読む「会社の説明」はどこにも存在しません。
逆に言えば、地域と業種が具体的な質問ほど、中小の不動産会社にも名前が出る余地があります。全国規模の質問で大手と競うより、こちらのほうが現実的です。
74日2,197回の実測で見えた、出る質問と出ない質問
当社は自社(株式会社アクセス・リンク)について10種類の質問を用意し、ChatGPT・Gemini・Google AI Overviewsの3つに毎日投げ続けています。2026年7月4日から9月22日までの74日間・2,197回の観測で、自社名が答えに登場した割合は全体で27.5%でした。
ただし、この27.5%という平均値はあまり意味を持ちません。設問ごとの差が極端だからです。
| 質問の種類 | 自社が登場した割合 |
|---|---|
| 社名を直接指定して聞く | 94.1%(206/219) |
| 地域名+MEO対策 | 84.0%(184/219) |
| 地域名+ホームページ制作 | 76.8%(169/220) |
| 県名+SEO対策 | 20.9%(46/220) |
| その他6種類(一般的な「おすすめ」「選び方」など) | 0.0%(0/1,319) |
市区町村名が入った質問では8割前後、県名まで範囲が広がると2割、地域名が入らない一般的な質問では74日間まったく登場しませんでした。
不動産会社に置き換えると、狙うべきは「渋谷区 賃貸 不動産会社」のような粒度であって、「不動産会社 おすすめ」ではないということになります。
ポータル依存の構造は、AI検索でどう効いてくるか
ポータルサイトへの掲載は、反響を取る手段としては今も有効です。問題は、その反響の取り方がAI検索の時代にどう作用するかです。
掲載を増やすほど、覚えられるのはポータルの名前になる
ポータルに掲載した物件ページのドメインはポータルのものです。そこに書かれた物件の説明文も、検索エンジンやAIから見ればポータルサイトのコンテンツとして扱われます。
取扱物件が何百件あっても、「この会社はどういう会社か」を説明した文章が自社ドメインに無ければ、AIが引用できる材料がないという状態になります。
加えて、ポータル上では価格と条件での比較が前提になります。会社の姿勢や得意分野といった、比較表に乗らない要素は伝わりません。
それでもポータルをやめる必要はない
ここは誤解されやすいところですが、ポータル掲載を止めるべきだという話ではありません。当面の反響を止めてまで自社集客に切り替えるのは、経営判断としてリスクが大きすぎます。
現実的なのは、ポータルは反響獲得の回路として維持したまま、自社サイト側に「会社を説明する層」を積み増していくやり方です。掲載費を減らせるかどうかは、その層が育ってから判断すれば足ります。
地域ビジネス全般でのAI検索の出方については、こちらの記事で実測データとあわせて整理しています。

AIは不動産会社の何を見て紹介しているのか
ここは推測ではなく、Googleが公式に書いている内容を確認しておくのが早道です。
Google公式が示す「ありふれていない情報」
Googleは2026年5月15日に、生成AI機能向けの公式ガイド「Optimizing your website for generative AI features on Google Search」を公開しました。そこでは、AI検索に向けた最適化は結局のところ従来のSEOと同じだと明言されています。
興味深いのは、このガイドが具体例として不動産の話を使っている点です。ありふれた情報の例として「初めて家を買う人への7つのヒント」が挙げられ、そうでない情報の例として、インスペクションを省いた自分の経験を下水管の話まで踏み込んで書いた記事が挙げられています。
つまり誰でも書ける一般論ではなく、実際に取引をした人しか書けない具体性が評価されるという整理です。
一次情報を持っているのは現場の不動産会社のほう
この基準で見ると、地域の不動産会社は本来かなり有利な立場にあります。そのエリアで何件成約したか、どの学区が動いているか、どの道路が渋滞するか、といった情報を日常的に持っているからです。
ポータルにも大手メディアにも書けないのはこの部分です。ここを文章にして自社ドメインに置くことが、AI検索で引用される材料をつくる作業にあたります。
なお同じガイドには、構造化データは生成AI検索の必須要件ではないこと、llms.txtのような特別なファイルをGoogle検索は利用していないことも明記されています。手間をかける順番を間違えないようにしたいところです。
まず自分でできること:自社サイトの「会社の輪郭」を整える

ここからは費用をかけずに着手できる手順です。順番に意味があるので、上から進めることをおすすめします。
会社概要ページに入れておきたい要素
AIが会社を説明するときに使う材料は、たいてい会社概要ページに集まっています。不動産会社の場合、最低限そろえたいのは次の項目です。
- 正式な商号と屋号(両方使っている場合は併記する)
- 宅地建物取引業免許番号と免許権者
- 所在地・電話番号・営業時間・定休日
- 代表者名と、代表者の経歴
- 加盟団体(宅建協会、全日本不動産協会など)
- 設立年と、その地域で営業している年数
このうち見落とされがちなのが免許番号と営業年数です。どちらも会社の実在性と継続性を示す情報で、AIが会社を特定するときの手がかりになります。
会社概要ページの書き方そのものは、別記事で手順化しています。

対応エリアと取扱種別を、箇条書きではなく文章で書く
「対応エリア:〇〇市、△△市」という箇条書きだけのサイトは多いのですが、これだけでは情報量が足りません。
どのエリアのどんな取引を、どういう理由で得意としているのか。賃貸か売買か、居住用か事業用か、相続案件や空き家に強いのか。この3つを文章で書くだけで、AIが引用できる分量が一気に増えます。
たとえば「〇〇市南部の築30年以上の戸建てを中心に、相続に伴う売却を年間20件前後お手伝いしています」という一文は、箇条書き10個分より具体的です。数字を入れられるなら入れたほうが確実です。
物件ページではなく「エリアの解説ページ」をつくる
自社サイトに物件一覧を載せても、掲載件数でポータルに勝てることはまずありません。同じ土俵に乗らないページを用意するほうが現実的です。
ポータルが書けない内容とは何か
ポータルサイトは全国共通のフォーマットで物件情報を並べる仕組みです。だから物件の仕様は網羅できても、そのエリアで実際に暮らす話や取引の実務は書けません。
書けるテーマの例です。学区ごとの通学路の実情、ハザードマップと過去の浸水履歴の読み方、そのエリア特有の再建築不可物件の扱い、管理組合の運営が健全なマンションの見分け方。
いずれも実際に案内し、契約まで進めた人でないと書けない内容です。Googleのガイドが言う「ありふれていない情報」とは、まさにこの種のものを指します。
広告規制との兼ね合いを先に確認する
不動産の広告表示には、宅地建物取引業法のほか、景品表示法に基づく「不動産の表示に関する公正競争規約」や、おとり広告に関する告示があります。エリア解説記事であっても、具体的な物件に触れる書き方をすれば広告表示とみなされる可能性があります。
とくに注意したいのは、すでに成約済みの物件を例として残し続けるケースです。記事内の事例は取引時期を明記し、「現在は取り扱っていません」と添えておくと安全側に倒せます。
「地域No.1」「最安値」といった最上級表現にも規約上の制限があります。判断に迷う表現については、所属する不動産公正取引協議会や顧問の専門家にご確認ください。
ChatGPT・Gemini・AI Overviewsで出方は違う

「AI検索」とひとまとめに言われますが、サービスごとに答えの作り方が違います。同じ質問を同じ日に3つへ投げても、自社が出るかどうかは揃いません。
3ソースの実測差(74日・2,197回)
同じ10設問を3ソースに毎日投げた結果が次のとおりです。
| ソース | 自社が登場した割合 |
|---|---|
| Gemini | 33.3%(243/730) |
| ChatGPT(OpenAI) | 31.3%(231/737) |
| Google AI Overviews | 17.9%(131/730) |
GeminiとChatGPTはほぼ同じ水準で、AI Overviewsだけが半分程度にとどまりました。AI Overviewsはそもそも表示されない検索が一定数あるため、その分だけ露出の機会が少なくなります。
これは当社1社・10設問での結果です。業種や設問が変われば順位は入れ替わり得ますが、3つが揃って同じ答えを返すわけではない点は共通しています。
不動産会社が優先するとしたらどれか
ソースごとに別々の対策を打つ必要はありません。Googleのガイドが述べているとおり、生成AI機能は従来の検索ランキングの仕組みの上に成り立っているためです。
現実的には、自社サイトの情報を整えることが3つすべてに効きます。そのうえで、どれか1つだけ見るならAI Overviewsをおすすめします。Google検索の結果画面に出るため、影響を受ける利用者の数がいちばん多いからです。
Googleビジネスプロフィールと店舗情報を整える
店舗を構える不動産会社にとって、ここは費用ゼロで効果が見込める領域です。
Google公式がローカル情報に触れている箇所
前述のGoogle公式ガイドには、生成AIの回答にローカルビジネスの情報が含まれる場合があり、Googleビジネスプロフィールを使うことでAIの回答と検索結果の両方で見つかりやすくなる、という趣旨の記述があります。
やることは地味です。業種カテゴリを正確に選ぶ、営業時間と定休日を最新にする、写真を定期的に追加する、口コミに返信する。これだけです。
ただし、サイト側の会社概要と電話番号や営業時間が食い違っていると、AI側がどちらを採用するか揺れます。両方を突き合わせて一致させておくことが前提になります。
MEOとの役割分担
当社の観測でも、地域名を含む質問での露出率は84.0%(184/219)と高く、地域情報が整っていることの効果は数字に表れています。
MEOとGEOはどちらか一方を選ぶものではなく、担当する範囲が違います。この切り分けは別記事で整理しています。

AIに名前が出た後、問い合わせに変えるための導線

名前が出ることはゴールではありません。ポータル依存を抜けるという話の本題は、むしろここから先にあります。
AI経由の訪問者は「読んでから」来る
ポータル経由の反響は、物件を見て条件が合ったから届きます。会社を選んで届くわけではありません。
対してAI検索や自然検索から来る訪問者は、記事を読み、会社の姿勢をある程度理解したうえでサイトに来ます。同じ1件の問い合わせでも、前提として共有されている情報量が違います。
だから件数だけで比較すると、自社集客は常にポータルに負けて見えます。比べるべきは反響数ではなく、成約までの件数と時間です。
問い合わせフォームの手前に置くもの
記事を読み終えた人がいきなり「お問い合わせ」を押すことは、あまりありません。その手前に、もう一段ゆるい受け皿を用意しておくと動きが変わります。
不動産会社の場合、机上査定、エリアの相場レポート、空き家の管理費用シミュレーション、内見前のチェックリスト配布などが該当します。いずれも氏名と連絡先だけで完結し、来店を前提としない形にするのが要点です。
そのうえで、記事の末尾には必ず次の行き先を置きます。関連する解説記事か、いまの受け皿か。どちらも無いページは、読まれて終わりになります。
何をどう測るか|3か月続けて分かったこと
最後に、取り組みの成果をどう確認するかです。
1回測っても判断材料にならない
AIの回答は毎日揺れます。当社の74日間の観測でも、日ごとの自社言及率は幅を持って動き続けました。ある日出なかったからといって、対策が失敗したとは言えません。
一方で、月単位でまとめると傾向は読めます。県名+SEO対策という設問では、7月17.9%、8月17.7%、9月28.6%と推移しました。日々の上下ではなく、月をまたいだ変化を見るのが実用的です。
なお、この期間に当社が0.0%のままだった設問も6つあります。上がった設問だけを見て判断しないようにしたいところです。
観測にかかる費用の目安
自分で測る場合、3つのAIに毎日10問を投げるAPI利用料は、当社の実績で74日間の合計が21.46米ドル、1日あたり約0.29米ドルでした。円換算で1か月およそ1,300円前後です。
金額そのものは小さいのですが、スクリプトを書いて毎日回し、結果を集計する手間が別途かかります。ここを内製するか外部に任せるかは、担当者の時間の使い道次第です。
当社が提供しているAccessGEOは、この定点観測と月次レポートを代行するサービスです。ChatGPT・Gemini・Google AI Overviewsの3つを対象としており、Perplexityなど他のAIサービスには現時点で対応していません。自社で回せる体制があるなら、まずはご自身で始めていただくのが確実です。
よくある質問
ポータルへの掲載をやめれば、AI検索での露出は増えますか
増えるとは言えません。ポータル掲載が自社の露出を妨げているわけではなく、自社ドメインに会社を説明する情報が少ないことが原因だからです。掲載を止めても、その情報が自動的に増えることはありません。反響を確保したまま、自社サイト側を並行して育てる進め方をおすすめします。
記事を書けば、どれくらいでAIに名前が出るようになりますか
期間を断定できる材料はありません。当社の観測では、県名を含む設問の露出率が2か月ほど横ばいのあと3か月目に動きましたが、これは1社1設問の事例にすぎません。まずページが検索でインデックスされ、そのうえで引用されるかが決まるため、数週間で結果が出るものとは考えないほうが安全です。
物件情報に構造化データを入れたほうがよいですか
Googleの公式ガイドでは、構造化データは生成AI検索の必須要件ではないとされています。ただしリッチリザルトの対象になる可能性があるため、SEO施策としては継続する価値があるとも書かれています。優先順位としては、会社概要とエリア解説の文章を整えることが先です。
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まとめ
不動産会社のAI検索集客は、ポータルをやめる話ではありません。ポータルで反響を確保したまま、自社ドメインに「会社の輪郭」と「そのエリアの一次情報」を積んでいく作業です。
当社の74日・2,197回の観測では、市区町村名を含む質問での露出率が8割前後だったのに対し、地域名のない一般的な質問では74日間ゼロでした。狙う質問の粒度を具体的にすることが、中小規模の会社にとって現実的な入口になります。
手順は、会社概要の整備、対応エリアと取扱種別の文章化、エリア解説ページの作成、Googleビジネスプロフィールの更新、問い合わせ手前の受け皿づくり。この順番なら費用をかけずに着手できます。
そのうえで、結果は月単位で追ってください。1回の結果に一喜一憂しないことが、続けるうえでいちばん大事な条件です。
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