BtoB SaaS・ITサービスがAI検索で名前を挙げてもらうには、比較・レビュー記事に載るだけでは足りません。公式サイトに料金・連携・向いている会社を文章で書き、外部の根拠もそろえたうえで、自社の出方を測るところから始めるのが現実的です。
国内の調査では、AIが示した根拠の約94%が第三者メディアだったと報告されています。この記事では、その数字をどう読むか、公式サイトで自分でできる手順、当社の実測データまでを整理します。
GEO(Generative Engine Optimization=生成AI検索での見え方を整える取り組み)という言葉が出てきますが、やることの大半は地道なページ整備です。当社は栃木県宇都宮市のWeb制作・SEO会社で、自社サイトを観測対象にAI検索での言及を毎日測っています。SaaSそのものではないため、SaaS固有の数字は持っていない点を先にお断りしておきます。
記事執筆者:認定SEOコンサルタント 三田健司
BtoB SaaSがAI検索で出にくい理由|比較記事に載るだけでは足りない

「カテゴリ名で探す質問」では大手が先に挙がる
SaaSを探す人の質問は、「勤怠管理システムのおすすめは」のようにカテゴリ名で始まることが多いです。この形の質問では知名度の高い数社が先に挙がり、規模の小さいサービスは名前が出にくくなります。
後述する国内調査でも、業務を具体的に指定した質問では上位3〜4製品がほぼ毎回挙がり、特定のない質問では登場率が約20%まで下がったと報告されています。広いカテゴリで勝負するほど不利になる構図です。
公式サイトの情報が薄いと、AIは第三者の説明を拾う
公式サイトが「業務を効率化」「課題をスピード解決」のような抽象的な表現ばかりだと、AIが引用できる具体的な文章がありません。料金、対象規模、連携先、導入までの期間といった情報がなければ、レビューサイトや比較記事の説明が代わりに使われます。
第三者の説明が悪いわけではありません。ただ、自社の意図とは違う切り取られ方をする余地が残ります。
買い手はAIをどう使っているか|海外調査と国内調査から読む
G2の調査:購入者の半数がAIチャットから探し始める
米国のソフトウェアレビューサイトG2が2025年8月に実施した、BtoBソフトウェア購入者1,000人超への調査があります。回答者の50%が、購買活動をGoogle検索ではなくAIチャットから始めると答え、4か月前の調査から71%増えたと報告されています。
候補リストをつくるときの情報源としても、AIチャットが最上位でした。ただし調査を行ったのはレビューサイトの運営会社で、日本の購買行動と同じとは限りません。
国内調査:根拠の約94%は第三者メディアだった
国内では、AI検索パートナーズ(TechSuite株式会社)が2026年9月に、業務システム・SaaS選定に関する20の質問を7種類のAIに投げた調査(140回答)を公表しています。AIが示した根拠のうち約94%が第三者メディアで、公式サイトは約5%でした。
回答数が140と少なく、事業者自身が出したプレスリリースである点は割り引いて読む必要があります。それでも、公式サイトだけを整えても足りないという方向性は、先のG2調査とも矛盾しません。
公式サイトが読まれる前提条件|クロール許可とHTMLの確認
robots.txtで検索用クローラーを止めていないか
ChatGPTの検索結果に出すためのクローラーはOAI-SearchBotです。OpenAIのドキュメントでは、これを許可していないサイトは検索回答に表示されない(リンクとしては出ることがある)と説明されています。
学習用のGPTBotとは別の設定なので、学習は拒否しつつ検索には出す、という分け方もできます。robots.txtを変更してから反映されるまで、約24時間かかるとされています。
主要な文章がHTMLに入っているか
SaaSのマーケティングサイトは、画面の描画をJavaScriptに任せる作りも少なくありません。Googleは描画できますが、AIごとにJavaScriptの扱いが同じとは限らないため、主要な文章がHTMLのソースに入っているかを確認しておくと安全です。
確認は簡単で、ブラウザで「ページのソースを表示」を開き、料金や機能の説明文を検索するだけです。見つからなければ、描画後にしか現れない文章になっている可能性があります。
Googleの条件はインデックスとスニペット
Googleが2026年5月に公開した生成AI向けの公式ガイドは、生成AI機能に表示されるにはインデックスされ、スニペット付きで表示できる状態であることが必要だと書いています。新しい特別な作法を求めるのではなく、SEOの基本が前提という立場です。
料金・連携・比較を文章で書く|公式サイトに置くべき「答えのページ」

料金ページに「誰向けか」と「いくらか」を書く
「お問い合わせください」だけの料金ページは、AIにも買い手にも判断材料を渡せません。金額を出せない場合でも、「従業員30名以下は月額○円から」のように目安と、金額が変わる条件を文章で書くと、引用の材料になります。
出せない事情があるなら、その理由を書いてください。空欄より、状態を書いてあるほうが読む側には意味があります。
連携・導入事例は条件つきで書く
連携先は一覧表だけでなく、「会計ソフトとはAPIで日次連携でき、CSV取り込みは不要」のように連携の方式と制約まで書きます。導入事例は、従業員数、導入前の課題、導入までの期間、効果の測り方をそろえて書くと、同じ条件の会社に届きます。
Googleの公式ガイドは、誰でも書ける一般論ではなく、経験に基づく独自の視点を持つ内容を重視しています。導入事例は、その材料として最も使いやすいものです。

比較ページは自社の弱みも書く
「他社との違い」のページには、向いていないケースも書いておきます。弱みまで書いてあるページは、買い手にとっても信頼できる情報として読まれやすいためです。
特定の他社名を挙げて批判する書き方は避け、「現場の入力を重視するならAタイプ、経営層のレポートを重視するならBタイプ」のように、タイプ別に整理するのが安全です。
実測データ:指名では出るのに、「おすすめ」では0%|自社サイトの82日
質問の型で、言及率は0%から93%まで開いた
当社は自社サイトについて10個の質問を用意し、ChatGPT(OpenAI)・Gemini・Google AI Overviewsに毎日投げています。観測期間は2026年7月4日〜9月30日、観測日82日・2,437観測で、自社が回答に出た割合(言及率)は全体で27.5%(669/2,437)でした。
質問別では、社名を含む質問が93.4%(227/243)、地域+MEOの質問が84.8%(206/243)、地域+ホームページ制作の質問が76.6%(187/244)、県域+SEOの質問が20.1%(49/244)でした。残る6つの質問は、「おすすめ」「選び方」の形を含め、82日間・1,463観測のすべてで0%でした。
SaaSに置き換えると何が言えるか
SaaSで言えば、社名や製品名で聞かれる質問では出るのに、「○○システムのおすすめ」では出ない、という構図になりやすいと考えられます。これは当社の数字からの類推で、SaaSでも同じ結果になると断定はできません。
だからこそ、どの型の質問で出ていて、どの型で出ていないかを分けて見る必要があります。全体の平均だけでは、この差が見えません。

AIごとにも差がある
同じ期間・同じ観測数で見ると、Geminiが33.0%(267/810)、OpenAIが31.5%(257/817)、Google AI Overviewsが17.9%(145/810)でした。1つのAIだけを測ると、全体像を読み違えます。
自社の外にある根拠を整える|レビュー・事例・パートナー

第三者の説明を、現在の正しい情報にそろえる
第三者メディアが根拠の大半を占めるなら、そこに載る自社情報が古い、あるいは誤っている状態は避けたいところです。レビューサイトの製品ページ、パートナー企業のディレクトリ、過去のプレスリリースの記載を一度集めてください。
料金・機能・対象規模が現在の公式サイトと一致しているかを確認し、ずれがあれば掲載元へ修正を依頼します。依頼できない場合は、公式サイトに正しい情報を明記しておきます。
口コミは「数を集める」より「具体的に書いてもらう」
レビュー件数を増やすことだけが目的になると、依頼の仕方が不自然になります。Googleのガイドも、ウェブ上に不自然な言及を作ることは見かけほど役に立たないと述べています。
導入が済んだお客様に、導入前の課題や使い方を具体的に書いてもらう。依頼は導入直後や成果が出たタイミングに、媒体の規約に沿った形で行うのが安全です。
競合と同じ質問で、挙がる製品と媒体を記録する
自社が出ない質問では、どの製品名が挙がっているかも一緒に記録してください。挙がっている製品がどんな媒体で紹介されているかが分かれば、自社に足りない外部の根拠が見えてきます。
特定の競合を批判する必要はなく、「どの種類の媒体に載っているか」を記録するだけで十分です。
自社で出した一次情報が、外部の根拠にもなる
自社が公開した調査データや導入ガイドは、他のメディアに引用されて、外部の根拠になることがあります。公式サイトに書いた独自の数字が、結果として第三者の記事の材料になる流れです。
比較記事に載る努力と、後回しでよい施策
比較・レビュー媒体への掲載は有力な手段のひとつ
国内調査の傾向を踏まえれば、比較・レビュー媒体への掲載は有力な手段です。ただし掲載の可否や順序は媒体側が決めるもので、掲載に費用がかかる場合もあります。
媒体への掲載を唯一の施策にすると、掲載方針の変更の影響をそのまま受けます。公式サイトの整備と並行して進めるのが安全です。
構造化データとllms.txtは後回しでよい
Googleの公式ガイドは、構造化データは生成AI検索に必須ではなく、llms.txtのような新しい機械可読ファイルもGoogle検索では使わないと明記しています。先にやるべきことは、ページの中身を具体的にすることです。
構造化データはリッチリザルトなどSEO全体には意味があるため、余力があれば入れる、という位置づけで十分です。
掲載を待つ間に、公式サイトでできること
掲載の可否が決まるまで何もしない、という選択は避けたいところです。「他社との違い」や「向いていないケース」のページを先に用意しておけば、比較記事を読んだ買い手が公式サイトで裏を取るときにも役立ちます。
買い手は比較記事で候補を絞ったあと、公式サイトで料金や連携を確認するのが一般的な流れです。裏づけになる具体性があるかどうかが、問い合わせにつながるかを分けます。
自社の出方を測る|無料でできる範囲と限界

質問を型別に10個決めて、3つのAIに聞く
質問は、社名・製品名で聞くもの、業務や会社規模を含めて聞くもの、「おすすめ」「比較」で聞くものの3つの型に分け、合わせて10個ほど用意します。ChatGPT、Gemini、Google検索のAI Overviewsに同じ文章で投げ、自社が出たかを記録します。
当社の観測では、週ごとの言及率は25.0〜31.0%の範囲(週あたり150〜210観測)で揺れました。1回聞いて出なかっただけでは、何も判断できません。
Search Consoleの生成AIレポートも併用する
Google側の実データとして、Search Consoleの生成AIパフォーマンスレポートで、AI機能での表示回数を確認できます。手作業の記録と併せて見ると、精度が上がります。
手作業の限界と、当社の立ち位置
この記録を毎日続けるのは現実的ではありません。当社のAccessGEOは、この観測を代行して月次レポートにまとめるサービスです。
正直に書いておくと、現在対応しているのはChatGPT・Gemini・Google AI Overviewsの3つで、Perplexityなどは含まれていません。測る対象を広げたい場合は、他のツールとの併用が現実的です。
よくある質問
比較サイトに載っていない新しいSaaSでも、AIに出ますか
出るとも出ないとも保証はできません。当社の実測でも、質問の型によって0%から93.4%まで開いており、型が違えば結果はまったく変わります。
まず公式サイトの料金・連携・事例を具体的にし、レビューサイトなど外部の掲載情報を現在のものにそろえるところから始めるのが現実的です。
ブログ記事を大量に増やしたほうがよいですか
増やすこと自体は目的になりません。Googleの公式ガイドは、ページ数が多いからといってサイトの品質や関連性が高くなるわけではないと述べ、順位操作のために大量の派生ページを作る行為はスパムポリシーに抵触するとしています。
数を増やすより、自社の導入事例や料金の考え方など、自社しか書けない1本を深くするほうが効果的だと考えています。
対策してから、どれくらいで変化が見えますか
当社の観測では、月別の言及率は7月27.1%(780観測)、8月27.2%(787観測)、9月28.0%(870観測)でした。数週間で大きく動くものではありません。
一方で、県域+SEOの質問のように、特定の質問だけが動く場面はあります。全体の平均より、質問ごとの動きを見るほうが変化に気づきやすいです。
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まとめ
BtoB SaaSがAI検索で出るかどうかは、比較記事への掲載だけでなく、公式サイトの具体性と外部の根拠の正しさの両方で決まると考えられます。国内調査では根拠の約94%が第三者メディアでしたが、これは公式サイトが不要という意味ではありません。
やる順番は、robots.txtとHTMLの確認、料金・連携・事例を文章で書く、外部の掲載情報をそろえる、の3つです。構造化データやllms.txtは、その後で構いません。
そして、直す前に現状を記録しておくこと。当社の82日・2,437観測(2026年7月4日〜9月30日)では、全体27.5%の中に0%から93.4%までの開きがありました。平均ではなく、自社が本当に出たい質問の型ごとに測るのが実務的です。
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