士業のAI検索集客について結論から書きます。税理士・行政書士がChatGPTやGeminiに「〇〇市でおすすめの税理士は?」と聞かれたとき、名前が出てくるかどうかは、事務所の実力ではなく「AIが参照できる形で情報が置かれているか」でほぼ決まります。
そして多くの事務所で起きているのは、事務所名を直接聞かれれば正しく答えられるのに、「おすすめは?」「比較すると?」という聞かれ方をすると一度も名前が挙がらない、という状態です。これは弊社が自社サイトを毎日観測しているデータでも、はっきり同じ形で出ています。
この記事では、士業事務所が自分でAIでの見え方を確かめる手順を先に説明し、そのうえで実測データから何が読み取れるか、明日から何を直せばよいかを順に書きます。ツールは不要で、最初の確認は15分ほどで終わります。
記事執筆者:認定SEOコンサルタント 三田健司
士業のAI検索集客で、いま何が起きているのか

まず前提を1行で。GEO(Generative Engine Optimization=生成AIの回答に自社が載るようにする取り組み)は、検索順位ではなく「AIの回答文に名前と根拠が入るか」を扱う分野です。
相談先を探す入口が、検索結果からAIの回答へ移りつつある
これまで「相続 税理士 宇都宮」と検索した人は、10件のリンクを見比べて自分で候補を絞っていました。いまは同じ人がChatGPTに「相続に強い税理士を宇都宮で探しています。どこがいいですか」と文章で聞き、返ってきた3〜5件の中から選びます。
候補の数が10件から数件に減ったということは、その数件に入れなかった事務所は、比較検討の土俵にすら上がらないということです。従来のSEOで「2ページ目」だった事務所が受けていた分の問い合わせも含めて、まとめて消える可能性があります。
士業はAIにとって「答えにくい」分野でもある
一方で、AI側にも事情があります。税務や法務は、間違った案内をすると読み手の不利益が大きい領域です。Googleはこうしたテーマを「人の健康・安全・経済的安定・社会の福利に大きく影響しうるトピック」として扱い、経験・専門性・権威性・信頼性(E-E-A-T)を特に重視すると説明しています。
つまり士業の分野では、AIは根拠の弱い情報源を持ち出しにくい。裏を返せば、資格・登録番号・所属会といった裏が取れる情報を整えている事務所ほど、AIが安心して名前を出せる状態になります。ここが士業のGEOで最も効く部分です。
自分の事務所がAIにどう紹介されているか、15分で確かめる手順
ツールを買う前に、まず手で確かめてください。3つのAIに同じ質問を投げるだけです。
聞く相手は3つ、質問は4種類
聞く相手は、ChatGPT・Gemini・Google検索のAI Overviews(検索結果の最上部に出るAIの要約)の3つです。生成AIの利用状況は媒体によって差がありますが、この3つを押さえておけば主要な入口はカバーできます。
質問は次の4種類を用意します。聞き方を変えると結果がまったく変わるので、必ず4種類とも試してください。
- 指名系:「〇〇税理士事務所について教えてください」
- 地域系:「〇〇市でおすすめの税理士事務所はどこですか」
- 課題系:「相続税の申告を初めて依頼します。〇〇県でどこに頼めばいいですか」
- 比較系:「税理士事務所の選び方と、比較のポイントを教えてください」
記録は3項目だけ取る
結果は表計算ソフトに、日付・AI名・質問・「自社名が出たか(○×)」・「出典に自社サイトが載ったか(○×)」の5列だけ記録します。凝った記録は続かないので、これで十分です。
ここで重要なのは、1回で判断しないことです。同じ質問でもAIの回答は日によって変わります。最低でも2週間、できれば1か月、同じ質問を同じ形で聞き続けて初めて「出ているのか、出ていないのか」が判断できます。

実測データ:出る質問と、1度も出ない質問がはっきり分かれる

ここからは、弊社(株式会社アクセス・リンク)が自社サイトを対象に毎日観測している実測値を紹介します。観測期間は2026年7月4日〜8月31日の53日間、観測回数は1,566回、対象はChatGPT(OpenAI)・Gemini・Google AI Overviewsの3ソースです。
業種はホームページ制作会社なので士業そのものではありません。ただし「地域名+専門サービス」で選ばれる商売という構造は士業と同じで、以下の傾向はほぼそのまま当てはまると考えています。
指名93.6%・地域77〜83%に対し、比較系は6設問すべて0%
53日・1,566回の観測を質問ごとに集計すると、次のようになりました。指名系の設問(社名を直接聞く質問)での自社言及率は93.6%、地域系の設問は77.1%と83.3%です。
一方で、汎用・比較系の6設問は53日間・1,566回の観測を通じて自社言及率0.0%でした。「おすすめは?」「選び方は?」「どちらがいい?」という聞かれ方では、53日間ずっと一度も名前が挙がらなかったということです。
全体では、同期間の自社言及率が27.1%(425/1,566観測)、引用率が20.1%(210/1,046観測)でした。数字だけ見ると「3割弱は出ている」ように見えますが、内訳を割ると指名と地域で稼いでいて、新規の見込み客が使う比較系はゼロ、という構造です。
AIによっても出方が違う
同じ53日間・1,566回の観測をソース別に分けると、自社言及率はChatGPT(OpenAI)が31.4%(526回中)、Geminiが32.3%(520回中)、Google AI Overviewsが17.7%(520回中)でした。
Google AI Overviewsの数字が低いのは、そもそもAI Overviewsが表示されない検索が多いためです。同期間の観測520回のうち115回(22.1%)はAI Overviews自体が出ませんでした。地域名を含む質問ではこの傾向が強く、ここは従来のSEOとMEOがそのまま効く領域だと読めます。
なぜ比較系だけ0%になるのか
比較系の質問に答えるとき、AIは個々の事務所サイトではなく「比較記事」「まとめ記事」「ランキングサイト」を参照します。自社サイトにどれだけ丁寧な業務案内を書いても、比較記事に名前が載っていなければ、その質問の答えには入りません。
士業に置き換えると、税理士紹介サイトや地域の士業ポータル、業界メディア、商工会議所の会員紹介ページなどが該当します。自社サイトの改善と、外部での言及を増やす取り組みは、効く質問の種類が違うということです。
AIが士業を紹介するとき、どこを見ているか

1. 公的な名簿に載っているか
税理士は日本税理士会連合会の「税理士情報検索サイト」に、行政書士は日本行政書士会連合会の「行政書士会員検索」に、登録者の情報が公開されています。いずれも会が運営する公式の名簿で、氏名・事務所所在地などを誰でも検索できます。
AIにとってこれは、資格の実在を確認できる数少ない一次情報です。名簿上の事務所名・所在地の表記と、自社サイトの表記が一致しているかを一度確認してください。旧住所や旧事務所名が残っていると、AIが同一の事務所だと判断できなくなります。
なお、これらの検索サイトは会員情報を公開しているだけで、特定の事務所を推薦するものではないと明記されています。掲載されていること自体が優位性になるわけではなく、表記が揃っていることに意味があります。
2. 自社サイトに、事実として書かれているか
Googleは検索セントラルで、AI OverviewsやAIモードに出るための特別な要件や特別な最適化はなく、これまでのSEOのベストプラクティスがそのまま有効だと説明しています。裏技はないということです。
士業サイトの場合、AIが引用しやすいのは「事実が一箇所にまとまっている」ページです。代表者名・登録番号・所属会・開業年・対応地域・取扱業務・料金の考え方が、キャッチコピーではなく事実の文として書かれているかを見直してください。
3. 第三者が言及しているか
比較系で名前が挙がるかどうかは、ほぼここで決まります。地域の商工会議所、業界団体、セミナー登壇の告知ページ、地元メディアの取材記事、士業ポータルの掲載。こうした自社サイト以外での言及が、AIにとっての「複数ソースでの裏取り」になります。
被リンクを買うといった話ではありません。すでに関わっている団体や活動が、ウェブ上に事務所名つきで記録として残っているかを確認する、という地味な作業です。
士業事務所が今日からできる5つのこと
事務所概要ページを「AIが読める事実の塊」にする
事務所名・所在地・電話番号・代表者名・登録番号・所属会・開業年を、1ページの中に文章として書きます。画像に入れた情報はAIが読めないので、必ずテキストで置いてください。
そのうえで、名簿・Googleビジネスプロフィール・自社サイトの3か所で表記を完全に一致させます。「株式会社」の位置、丁目番地の書き方、ビル名の有無まで揃えるのが理想です。
取扱業務を「悩みの言葉」で1業務1ページにする
「相続税申告」「建設業許可申請」といった専門用語だけでなく、相談者が実際に使う言葉を見出しに入れます。「親が亡くなって何から手をつければいいか分からない」「許可が必要か分からない」といった言い回しです。
AIは質問文と近い表現のページを拾います。専門用語しか置いていないサイトは、専門用語で聞かれたときにしか出てきません。
対応地域と対応範囲を明記する
「関東一円」ではなく、実際に対応している市町村名を並べます。地域系の質問はAIが最も答えやすく、実測でも77.1%と83.3%という高い露出率が出ている領域です(2026年7月4日〜8月31日・53日・1,566回の観測)。
実績を「件数と年」で書く
守秘義務があるので固有名詞は書けませんが、「開業以来〇〇年、相続税申告〇〇件」のように、検証可能な形の数字は書けます。数字のない「豊富な実績」は、AIにとっては何の情報でもありません。
よくある質問ページを設ける
相談時に実際によく聞かれる質問を、質問文と回答文の形で20問ほど置きます。AIの回答は質問と答えの対応で組み立てられるため、この形式は引用されやすい構造です。
なお、税務・法務の個別の判断については、この記事の内容にかかわらず所轄の官公署や専門家にご相談ください。ここで扱っているのはあくまで情報の見せ方の話です。
効果をどう確かめるか

見るべきは3つの数字
追う指標は、言及率(質問したうちAIが自社名を出した割合)、引用率(回答の出典に自社サイトが載った割合)、そして質問の種類別の内訳です。この3つがあれば、改善が効いているかは判断できます。
逆に「AI検索での順位」という指標は存在しません。AIの回答に順位はなく、名前が挙がるか挙がらないかの二択です。順位を約束する話が出てきたら、根拠を確認してください。
確認の頻度は週1回でも足りる
毎日測るのが理想ですが、手作業なら週1回・同じ曜日・同じ質問文で十分です。大切なのは条件を変えないことで、質問文を毎回書き換えると前回との比較ができなくなります。
ちなみに弊社の観測は自動化しており、1日30観測でおおむね0.27ドル程度の実費で回しています。自力で毎日続けるのが難しい場合に、こうした定点観測を代行するのがAccessGEOのサービスです。対応しているAIは現時点でChatGPT・Gemini・Google AI Overviewsの3種類で、それ以外のAIは対象外である点は正直にお伝えしておきます。
よくある質問
Q. サイトを直せば、どのくらいでAIの回答に反映されますか?
AI側の学習・参照のタイミングは公開されておらず、確実な日数はお答えできません。弊社の観測では、同じ質問でも日によって結果が動くため、変化を判断するには数週間単位で見る必要がありました(2026年7月4日〜8月31日・53日・1,566回の観測)。短期で結論を出さないことをおすすめします。
Q. AIが自分の事務所について間違ったことを答えます。どうすればいいですか?
まず、その誤情報の元になりそうな古いページが自社サイトや外部サイトに残っていないかを確認します。旧料金表、閉鎖した支店の案内、更新の止まったポータル掲載などが典型です。正しい情報を自社サイトに明確に置き、古い情報を削除・訂正するのが基本の対応になります。
Q. ホームページがなくても対策できますか?
公的名簿とGoogleビジネスプロフィールだけでも、指名系の質問にはある程度答えてもらえます。ただし取扱業務や地域の書き分けができないため、地域系・課題系の質問で候補に入るのは難しくなります。参照先となる自社の情報源は1つは持っておきたいところです。
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まとめ
士業のAI検索集客で最初にやるべきことは、ツールの導入ではなく現状の確認です。ChatGPT・Gemini・Google AI Overviewsの3つに、指名・地域・課題・比較の4種類の質問を投げて、自分の事務所が出るかどうかを記録してください。
おそらく、指名系では出て、比較系では出ないという結果になります。弊社の53日間・1,566回の観測でも、指名系93.6%に対して比較系の6設問はすべて0.0%でした。この差は事務所の実力の差ではなく、AIが参照できる情報がどこに置かれているかの差です。
公的名簿と自社サイトの表記を揃え、取扱業務と対応地域を事実として書き、外部での言及を少しずつ増やす。地味ですが、これが士業のGEOで実際に効く手順です。まずは今日、AIに自分の事務所名を聞いてみるところから始めてください。
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