AI検索で自社が出るかどうかは、思っている以上に「動かない」設問と「動く」設問に分かれます。AccessGEOが79日間・2,347回の実測で確認したところ、10個の質問のうち上がったのはたった1問でした。
その1問は「県域SEO」に関する質問で、7月17.9%→8月17.7%→9月26.9%(自社名がそのまま回答に出た場合だけを数える「self基準」)まで伸びています。この記事では、その前後で何が起きていたのかを実測データだけを根拠に検証します。
記事執筆者:認定SEOコンサルタント 三田健司
今回分かったこと:AI検索で自社が出る質問は基本的に動かない
79日間・2,347回観測して、上がったのは10問中1問
AccessGEOは2026年7月4日から自社を対象に、ChatGPT・Gemini・Google AI Overviews(検索結果画面の上部にAIがまとめを表示する機能)へ日次で10種類の質問を投げ、回答に「アクセス・リンク」という自社名が出るかどうかを記録しています。Google AI Overviewsの結果はDataForSEOという検索結果取得サービスを経由して取得しています。
9月27日までの79日間・2,347回の観測で、自社言及率は27.4%でした。この平均だけを見ると「AI検索の露出はあまり動かない」という印象を持たれるかもしれません。
実際、指名検索や地域のMEO(Googleマップでの見え方)に関する質問は90%前後で安定しており、逆に0%のまま79日間まったく出ない質問も複数あります。
その中で唯一動いたのが「県域SEO」の質問
10問の中で唯一、月ごとに言及率が動いたのが「県域名+SEO」を組み合わせた質問でした。実際に投げているのは「〇〇県内でSEOに強い会社はどこですか」に近い聞き方です。
7月は17.9%(14/78)、8月は17.7%(14/79)とほぼ同じ水準で推移していましたが、9月は26.9%(21/78、9月27日時点)まで伸びています。約2割から3割弱への変化で、絶対値としては大きくありませんが、他の9問がほぼ動かなかった中では明確な例外です。
「tracked」ではなく「self」基準で数える理由
AccessGEOの観測ログには、自社名だけでなく競合他社名が出たかどうかを示す「tracked」という指標もあります。今回の県域SEOの質問をtracked基準で数えると68.5%(161/235)まで跳ね上がりますが、これは競合の名前が出たケースも含んでいるためです。
この記事で使っている数値は、回答に「アクセス・リンク」という自社名がそのまま出たかどうかだけを数える「self」基準に統一しています。基準の取り方だけで見え方が大きく変わるため、どちらの基準で数えているかを明示することが欠かせません。

なぜ「県域SEO」の質問だけが動いたのか
単純な指名検索とは違う、複合キーワードの質問だった
今回動いた質問は、地域名と専門用語を組み合わせた複合キーワード型の聞き方です。これに対して、指名検索や単純な業種名の質問は、AIが参照する情報源がある程度固定されやすく、結果として言及率も安定しやすい傾向があります。
一方で複合キーワード型は、AIがどのページ・どの文脈を参照するかの選択肢が多く、月によって参照先が入れ替わりやすいと考えられます。同じ「AI検索対策」という言葉でも、質問の作り方によって動きやすさがまったく違うということです。
複数の情報源を組み合わせる質問ほど動きやすい
たとえば「栃木県でSEOに強い会社を教えてほしい」という質問に対して、AIは一つの記事だけでなく、比較サイト・地域の企業一覧・個々の会社のサービスページなど、複数の情報源を組み合わせて回答をつくろうとします。組み合わせの候補が増えるほど、月によって選ばれる情報源の重み付けが変わりやすくなると考えられます。
「Query fan-out」という仕組みが関係している可能性
Googleが公式に公開している生成AI検索の最適化ガイドでは、AI Overviewsなどの機能が「Query fan-out」という仕組みで、ひとつの質問を複数の関連クエリに自動で分解し、それぞれの検索結果を組み合わせて回答を作っていると説明されています。複合キーワードの質問は分解のされ方が多様になりやすく、月によって参照される検索結果の組み合わせが変わることで、言及率の変動につながっている可能性があります。
ここは推測の域を出ませんが、単純な質問より複合的な質問の方が変動しやすいという傾向は、今回のデータとも一致します。
上がったのはGeminiだけ、OpenAIは横ばい、AI Overviewsは0%のまま
ソース別に切り分けると見える偏り
「AI検索の露出」とひとくくりにする前に、ChatGPT(OpenAI)・Gemini・Google AI Overviewsの3ソース別に分けて見る必要があります。県域SEOの質問について月別・ソース別に集計すると、7月はGemini38.5%(10/26)・OpenAI15.4%(4/26)、8月はGemini19.2%(5/26)・OpenAI33.3%(9/27)、9月はGemini50.0%(13/26)・OpenAI30.8%(8/26)でした。
9月の上昇は、実質的にGeminiだけの急伸によるもので、OpenAIは7月から9月まで15〜33%の範囲で推移しており、9月単独では特に伸びていません。3つのAIをひとまとめに「AI検索」と呼んでしまうと、この違いは見えなくなります。
Google AI Overviewsは3か月とも0%
一方、Google AI Overviewsは7月・8月・9月のいずれも0/26〜0/27で、自社名の言及は一度も確認できていません。同じ「AI検索」という括りでも、どのAIに聞くかによって挙動がまったく違うことがこの1問だけでも分かります。
「AI検索の露出が増えた」と一言で言っても、その内訳を見ないと実態を見誤る可能性があります。地域名を含む質問ほど、この3ソースの差が大きく出る印象があります。

上昇の前後で、自社サイトに何をしたのか
正直に言うと、9月にこの質問向けの施策は打っていない
「露出が増えた」と聞くと、何か特別な対策を打った結果だと思われるかもしれませんが、正直なところ、AccessGEOでは9月に県域SEOの質問を意識した施策は特に行っていません。サイトの構造やコンテンツに大きな変更を加えたわけでもなく、指名検索の数も大きく動いていませんでした。
関連するページの更新履歴を確認しても、9月に入ってから手を加えた形跡はありません。つまり、今回の上昇は自社の能動的なアクションの結果ではなく、AI側の参照先や生成結果が自然に変化した可能性が高いということです。
「何もしていないのに動く」のがAI検索の特徴の一つ
これは裏を返せば、AI検索の露出は自社の施策だけでなく、AI側のモデル更新・検索インデックスの更新・競合サイトの動向など、こちらでコントロールできない要因でも変動するということです。単発の上昇や下降を見て「これが効いた」と結論づけるのは早計で、複数か月にわたる傾向を見る必要があります。
何もしていない月に上がることもあれば、何かを変えた月に変化が出ないこともある、という前提で数字を見るのが実態に近いといえます。

Google公式ガイドが示す「露出が変わる理由」に当てはめる
鮮度・専門性・技術的な検出可能性という3つの視点
Google Search Centralが2026年5月に公開した生成AI検索機能向けの最適化ガイドでは、AI Overviewsなどの機能が参照する情報の変動要因として、コンテンツの鮮度や信頼性、幅広いクエリに答えられる包括性、クロールされやすさといった技術的な検出可能性を挙げています。同ガイドは、AEO(Answer Engine Optimization)やGEO(Generative Engine Optimization)という呼び方も「従来のSEOと同義」と位置づけ、llms.txtの設置やAI向けの特別なコンテンツ分割には効果がないと明記しています。
派手な専用対策より、地に足のついた基本のほうが重視されているということです。
中小企業のサイトでもすぐ確認できること
これを踏まえると、県域SEOのような複合キーワードの質問で露出を安定させるには、特別なAI対策ではなく、該当する地域名・サービス名を含むページの情報が最新であることを地道に確認するのが基本になります。具体的に確認しておきたいのは、対応地域を書いたページの更新日が古すぎないか、会社概要ページの所在地・対応エリアの表記が実際と一致しているか、地域名を含むページが検索エンジンに正しくクロールされているか、の3点です。
いずれも特別なAI対策ではなく、これまでのSEOで言われてきた基本の確認作業にすぎません。派手な施策より、こうした基本の積み重ねの方が再現性があるというのが、Google公式ガイドとも一致する考え方です。
この1問の上昇を「成果」と呼んでいいのか
月あたり26〜27件というサンプル数の限界
今回の県域SEOの質問は、1か月あたり26〜27件の観測件数です。この規模では、1〜2件の結果が入れ替わるだけで言及率が数ポイント動きます。
実際、7月から8月にかけてはOpenAIが上がり、Geminiが下がって、合計ではほぼ相殺されていました。9月の上昇も、来月には元の水準に戻る可能性を否定できません。
数字だけを見て「上向いている」と結論づけるのは、まだ早いということです。
「動いた」と言うためには、複数か月の継続観測が必要
1か月だけの変化を「対策が効いた」「露出が増えた」と判断するのは危険です。動いたかどうかを見極めるには、最低でも2〜3か月分のデータを並べて、単発のブレか継続的な傾向かを確認する必要があります。
AccessGEOでも、この質問については今後の推移を引き続き観察していく予定です。


上がる質問と上がらない質問の違いから見える傾向
79日間ずっと0%だった6設問との対比
AccessGEOが観測している10設問のうち、6設問は79日間を通じて自社名の言及が一度もありませんでした。これらは「おすすめの会社はどこですか」のような、比較・推薦を求める聞き方に多く見られます。
今回動いた県域SEOの質問と対照的なのは、比較・推薦系の質問はAIが挙げる候補の枠自体が狭く、そこに入るための条件がより厳しいらしいという点です。
複合キーワード型は動く余地がある、比較・推薦型は動きにくい
逆に言えば、複合キーワード型の質問は、まだ入り込む余地がある分だけ、地道な情報整備によって言及率が変わる可能性が残っているとも言えます。0%のまま動かない6設問の詳細と、そこに共通する特徴は、別記事で詳しく扱っています。

自分の会社でできること:3か月分の記録から見えてくるもの
まずは3つのAIに、同じ質問を月1回聞いて記録する
今回のような変化は、単発では意味を持ちません。ChatGPT・Gemini・Google(AI Overviewsが出る検索)に、自社に関連する質問を月1回など決まったタイミングで聞き、出た内容と出なかった内容をメモしておくことが最初の一歩です。
3か月ほど続けると、どの質問が動きやすく、どの質問がほぼ固定されているかが見えてきます。
継続観測が手間になってきたら
具体的には、①質問文をスプレッドシートなどに書いておく、②月に1回、同じ質問をChatGPT・Gemini・Google検索に投げる、③出た内容と出なかった内容をそのまま記録する、というシンプルな3ステップで十分です。質問を作るときは、指名検索だけでなく、地域名や業種名を組み合わせた複合キーワード型の聞き方も1〜2問混ぜておくと、変化を捉えやすくなります。
自分で続けるのが手間になってきた場合は、AccessGEOのように日次でAIに質問を投げ続け、月次レポートにまとめるサービスを使う方法もあります。どちらを選ぶにしても、大事なのは「1回測って終わり」にしないことです。

よくある質問
AI検索の露出は、どのくらいの頻度で変わるものですか?
質問の種類によって大きく異なります。今回のように79日間で10問中1問だけが動いた、という程度の頻度感が、AccessGEOの実測ではひとつの目安になります。
指名検索のような固定的な質問はほとんど動かず、複合キーワードの質問の方が動く余地があります。
露出が上がったら、その施策が効いたと判断していいですか?
1か月だけの変化では判断できません。今回のケースでも、AccessGEO側では特別な施策を打っていないにもかかわらず露出が上がっており、サンプル数の少なさによるばらつきの範囲内である可能性も残ります。
最低でも2〜3か月分のデータを並べて確認することをおすすめします。
自分の会社でも同じように調べられますか?
はい。ChatGPT・Gemini・Google検索に自社に関連する質問を定期的に聞き、回答の内容を記録していくことで、同じような分析が可能です。
手間をかけずに継続したい場合は、AccessGEOのような定点観測サービスを利用する方法もあります。
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まとめ
AccessGEOが79日間・2,347回観測した実測データでは、10設問のうち動いたのは「県域SEO」の1問だけで、7月17.9%→8月17.7%→9月26.9%まで上がりました。内訳を見ると、上昇の主因はGeminiの言及率上昇(19.2%→50.0%)で、OpenAIはほぼ横ばい、Google AI Overviewsは3か月とも0%のままでした。
自社側で特別な施策を打ったわけではなく、原因を一つに特定することはできませんが、Google公式ガイドが挙げる鮮度・専門性・技術的な検出可能性といった基本要因に当てはめて考えることはできます。1か月の変化に一喜一憂せず、複数か月の継続観測で傾向を見極めることが、AI検索対策の出発点になります。
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